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1ー5

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1ー5

夕張の言う通り、部屋の中はいかにも引っ越しの真っ最中と言った様子であった。
部屋は教室程度の広さで、入り口側半分のスペースには、廊下と同じく段ボールが乱雑に積み上がっている。
それに対し、部屋の窓側もう半分には、事務机が窮屈そうに並べられていた。

やりかけの書類が山積みになっている机もあれば、アンティーク調の小物が置かれて小綺麗に整った机、プラモを造った形跡のある机…等々、それぞれ個性的というか好き放題な状態であったが、"目を引く"という意味で言えば、最奥に鎮座している執務机とその主が一番であろう。

[旗艦]の表札の置かれたその机には、和服で黒髪の綺麗な長身の女性が気だるげに肘を突き、書類と格闘中であった。
服装から察するに、やはり戦艦か空母だろうか。

やや儚げな雰囲気を纏う彼女とは対照的に、机の上の一角には御守りや魔除けに招き猫、パワーストーンに座布団に載った水晶、怪しげな木彫りの人形…等々、色とりどり、古今東西の様々な開運アイテムが並んでおり、胡散臭い土産物屋の様相を呈している。

その一方で、すぐ横には分厚いファイルや資料が整然と並んでいることが、かえって机の上の空間を更に混沌としたものにしていた。

(…この人、大丈夫なのかしら…?)

…それが天津風の抱いた第一印象であった。

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「…ん…? ああ…、そういえば、来るの今日だったっけ…。」
「はいっ、トラック泊地所属、第十六駆逐隊よりこちらへ転属となりました。陽炎型駆逐艦九番艦、天津風です。これから、お世話になります。」
「…ええ、ようこそ、一技戦へ。私は扶桑型戦艦二番艦の山城。ここの旗艦"兼"司令をやってるわ。よろしく、天津風。」

ぼそぼそとした口調で山城が答える。(ただし、"扶桑型戦艦"の所だけは強調して。)
少し間を置いてから、それまでへの字だった口元をほんの少しだけにやり、とさせて山城は話し始めた。
まるで、怪談話でも始めるときのような、そんな声色だ。

「…幽霊艦隊。」
「へ…?」

「…他の艦娘は、ウチの事をそう呼ぶの。何故だか解る?」
「い、いえ…、わかりません。」

いきなりこの人は何を言い出すのだろう、と天津風は思った。

「…ここに所属しているのは皆、退役間際の老朽艦か、もしくは訳アリの艦娘でね。扱いも予備艦ってことになっているの。」
「そしてこの立地。あまりにも場所が解りにくいから、最近では、「一技戦は書類上にのみ存在する裏金作りのための幽霊部署だ」…なんて噂まで出回っているらしいわ。」
「え…ええ~…」
「他にもあるわよ…。人材の墓場、島流し艦隊、解体予備軍…数えだしたらキリがないわね。…ふふ、ふふふ…。」

不気味に笑う山城。

「………。」
「…まっ、ここはそんな感じの窓際部署だから、戦果とか考えずのんびりしていると良いわ。」

先程とは打って変わり、山城はけろっとして投げやりな口調で話し出す。

「…山城さん、新入りの子にいきなりそういう、怖がらせるようなことを言うのはどうかと思います…。」

呆れた様子で夕張が横から口を挟む。

「…だーって、本当の事だし…。どーせウチなんて…ぶつぶつぶつ…。」

そう言うと、山城は机に頬をべったりと付け、むくれたようにぶつぶつと愚痴り始めた。

「…もうっ、旗艦がそんなネガティブでどうするんですか。しっかりしてくださいよっ。」

大きなため息をつき、夕張が天津風へ耳打ちする。

「…ごめんねー、天津風ちゃん。…ちょっと、山城さんって気難しくって。いざとなったら本当に頼もしいんだけど…。」
「は、…はい。」

「…まったく…不幸だわ…そもそも…ぶつぶつぶつ…。」

―――…もしかすると自分は、左遷でもされたのではないだろうか。

先程の、第一技術試験戦隊の名前を出した際の、他の艦娘の反応にもようやく合点がいった。
…どうやらこの艦隊は知名度が低過ぎるが為に、噂好きの駆逐艦娘達の間では、伝説上の存在か何かと同列に扱われているらしい。

「…はぁ、放っといて次、…行きましょうか。」
「…お願いします。」

拗ねている山城を尻目に、夕張と天津風は執務室を後にした。

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